観光業が潰れるインパクト

2020年8月9日

目次

記事を書こうと思ったきっかけ

コロナの中で観光業が潰れるぐらい仕方がないじゃないかという発言がWEB上で非常に沢山見受けられて、本当にそうなのかと思ったからです。

WEBでの発言はみんなが気軽にできてしまうので、その結果であるのはよくわかるのですが、ニュースに対して本当であろうが間違っていようが、一番早くにされた発言が影響力を持ち、世論に近い形になってしまうのが気になっています。

中小企業診断士である限り、事業調査は基本中の基本なので、一時ソースなども見ながらちょっと考えてみました。

観光業の規模

があるのでそこからピックアップしてみたいと思います。

観光業全体の経済規模「令和2年版観光白書(2020年6月発行)
【外国人訪問者数】3188万人
【訪日旅行収入】4兆8135億円
【国内旅行収入】17.2兆円

宿泊業の経済規模「経済センサス活動調査(H28)
宿泊業事業所数:39,701か所
従業者数:574,067人
付加価値額:2,132,794百万円
一人当たり付加価値額:3,715千円

全事業所数(公務を除く)
事業所数:534,0783か所
従業者数:56,872,826人
付加価値額:289,535,520百万円(289兆円)
一人当たり付加価値額(5,090千円)

経済センサスはちょっと古いので、今年2020年12月の数字を見ればもっと顕著に出てくると思います。正直この数字だけを見ると、宿泊業だけだと全体の従業員数は1%、付加価値額は0.7%となるので、そこまでダメージではないと思うのかもしれません。

それでも観光業は宿泊業がキーになりますが、旅行代理店、飲食、小売、イベント、ITシステム、建設業、旅客など幅広い分野に波及します。企業に関与して、勘定科目内訳書などを見ると取引先の数が非常に多いことも見えてきたりします。

借入金について

そして、気になっているのは借入金についてです。観光業を行っていたホワイト・ベアーファミリーが倒産したのは記憶に新しいところだと思いますが、ここの負債は351億円です。負債には買掛金・未払金など色々とありますが、設備投資も大きく、多くは金融機関が貸し付けているので、金融機関へのダメージが非常に大きくなります。

宿泊業は装置産業の面が大きく、借入金がどうしても大きくなります。金融機関としても上顧客であり、多額の貸し付けをしています。これが倒産となると全て貸倒となってしまいます。いくら担保を取ったり、保証をつけていたとしても、回収は大変ですし、国全体としてのダメージは甚大なものとなります。

観光業が潰れることだけで大げさと言われるかもしれませんが、現在の金融機関の収益悪化もあるので、金融機関の再編は避けられないと思います。特に信金・信組は再編があるんだろうと思います。そうなると地方は益々ガタガタになるのではと思います。

地方の信金は総資産が1千億円に満たないところもありますし、かなりのところが持たないのでは・・・

サプライチェーンが崩れる・・・? その後は・・・?

観光業というサプライチェーンへの影響が大きく、特に地方では中心的役割となっているところが崩壊したらどうなるのか、恐れています。もちろん一方で好奇心もあるのですが・・・。

GoToは世論を見る限りもう無理だとは思うのですが、そうなると観光業が崩壊して、連鎖的にダメージを受ける地方はさらにボロボロになり、東京一極集中が加速するのではないかと思います。東京もダメージは半端ではないでしょうけど。

まぁ、自然観光資源自体は変わらないので、将来的に復活させる形はできるんでしょうけど、今までの形はガラガラポンで一から作っていくしかないでしょうね。金は何とかなっても、人とサプライチェーンが大変そうです。


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中小企業診断士

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